担当:レッドさん
■企業内診療所のお仕事ってどんな感じ?
時代とともに少なくはなってきましたが、企業内健康管理室の中には、診療所機能を持っていて、外来専門の医師、看護師、薬剤師、あるいは検査技師をおいている場合があります。ほぼ全員、契約社員か派遣社員です。
対象者はその会社の従業員・一部の関連会社の方になり、開院時間は平日午前中だけだったり、9:00~17:00と会社の勤務時間に合わせていたりとさまざまですが、残業はほぼありません。
企業のなかの診療所ですから、実施できる検査には限界があり、尿検、採血、心電図くらいなものです。採血の結果は、即日判明するわけではなく、外部の検査会社に依頼するため少なくとも2日ほどかかります(正常範囲を大きく超えている場合は、翌日にFAXなどで簡易の検査結果が出る場合もあります)。なので、基本的には病状の重いガンや心疾患、糖尿病などをかかえている患者さんは外部の医療機関に主治医をもってもらうことが多いです。
お薬は、院内処方である場合が多く、看護師が調剤することもありました。処方箋通りに錠数をそろえ、飲み方や副作用等を説明しながら渡すので、慣れないとなかなか大変です。私の場合、恥ずかしながらお薬の知識はほぼ皆無だったので、はじめは「今日の治療薬」を片手に仕事してました。でも、そのおかげで看護の知識に幅が広がり、結果的には良い経験になったと思います。
基本的には、体力的に楽な企業内診療所のお仕事ですが、企業ならではの難しさにぶつかることも度々あります。1つは、病状の重い患者さんの対応です。先ほど、そういう方は外部の医療機関を受診してもらうとお伝えしましたが、患者さんからすると、会社にいながらすぐに受診できる診療所だから、わざわざ年休を消化して外の病院まで行きたくないという思いがあったり、診療所の医師も、そういう患者さんの希望を無下にはできず診療所で診ていこうとするケースが多いのです。結果、適切な治療ができなかったり、その医師の勤務時間外もその患者(従業員)をみなくてはいけないスタッフにとっては責任がかかるし、また会社のリスクを考えるとそのままでいいの?というフラストレーションが溜まります。もう1つ企業ならではの難しさは、個人情報の取り扱いになります。診療所内で知り得た個人情報は守られるべきですが、治療をしながらであってもコントロールが難しい疾患の場合、そのままその従業員が働いていて大丈夫なのかというリスクについても考えなくてはいけません。ご本人が自ら、残業や出張の制限、あるいは適正な職場への異動を希望されるケースは少なく、将来の出世へのダメージを気にして会社側には何も伝えないで欲しいというケースが多く、その度に自分たちの立場の難しさを痛感させられます。そういうケースの場合は、外部の医療機関の医師のコメント(このまま働かせていいのか、就業制限は必要かの書面)をもらったり、社内の産業医や産業保健スタッフと連携をとりながら慎重に進めていく必要があり、なかなか大変です。
■企業内診療所、どんな人に向いている?
夜勤、残業がなく、基本的に体力的な負担が少ない企業内診療所のお仕事は、子育てや介護、勉学などそのほかのことで忙しい方にはピッタリだと思います。また、基本的に重度の患者さんはいないので看護の仕事にブランクがあって、いきなり医療機関で働きはじめるのはちょっと不安という方や、あるいは産業保健のお仕事に興味があって、こういうところで経験を積んで、病気をかかながら働く人のサポートをしたい、という方にもお勧めです。